医療DX推進体制整備加算とは?改定の内容やDX化のメリットを解説

医療現場は、日々進化するデジタル技術によって大きな変革期を迎えています。特に、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は、医療の質向上や患者さんの負担軽減、そして医療現場の働き方改革に大きな可能性を秘めています。

しかし、医療機関にとって、デジタル化を進めるには、システム導入や運用など、様々な費用がかかってしまうのが現実です。そこで国は、医療機関の積極的なICT化を支援するため、医療DX推進体制整備加算という制度を導入しました。

この記事では、この加算について、概要や目的、改定の内容などを詳しく解説します。

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目次

医療DX推進体制整備加算の概要と目的

医療DX推進体制整備加算とは、病院やクリニックがデジタル化を進めるための準備や取り組みを評価し、診療報酬という形でプラスアルファの収入を認める制度です。分かりやすく言うと、国が病院やクリニックのデジタル化を応援してくれる制度です。

例えば、昔ながらの手書きのカルテを、パソコンで入力できる電子カルテシステムに移行するとします。しかし、新しいシステムの導入や、スタッフへの操作説明など、何かと費用がかかってしまいますよね。そこで、この加算によって、そうした費用の一部を国が負担してくれるのです。

医療DX推進体制整備加算の点数

医療DX推進体制整備加算の点数は、以下の表の通りです。

加算名点数
医療DX推進体制整備加算8点
医療DX推進体制整備加算(歯科点数表初診料)6点
医療DX推進体制整備加算(調剤基本料)4点

なお、上記の加算点数は令和6年6月から9月にかけて採用されるものです。改正により加算名や点数、要件が変わるので後ほど詳しく解説します。

施設基準

医療DXを推進するためのシステムを適切に運用できる環境が必要です。具体的には、以下の要件を満たしている必要があります。

  1. オンライン請求を行っていること。
  2. オンライン資格確認を行う体制を有していること。
  3. 職種ごとの要件
    • 医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制が整っていること。
    • 歯科医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制が整っていること。
    • 調剤)保険薬剤師が、電子資格確認の仕組みを利用して取得した診療情報を閲覧又は活用し、調剤できる体制を有していること。
  4. 電子処方箋を発行する体制を有していること(令和7年3月31日までの経過措置)。(調剤)電磁的記録をもって作成された処方箋を受け付ける体制を有していること。(令和7年3月31日までの経過措置)
  5. 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(令和7年9月30日までの経過措置)
  6. マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること。(令和6年10月1日から適用)
  7. 医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること。
  8. 電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理の体制を有していること。

医療DX推進体制整備加算の改正内容

医療DX推進体制整備加算の加算点数や施設基準は先述した通りですが、これは令和6年6月~9月に適応されるものです。令和6年10月からは改正され、「マイナ保険証利用実績に関する基準」が適用されるので、その内容を詳しく見ていきましょう。

加算点数

従来の加算は、オンライン請求や特定のシステム整備が主な要件でしたが、改正後はマイナンバーカードの利用実績が重視され、その利用率に応じて加算額が3段階に分けられます。具体的な施設基準ともに見ていきましょう。

加算名点数
医療DX推進体制整備加算111点
医療DX推進体制整備加算1(歯科)9点
医療DX推進体制整備加算1(調剤)7点
加算名点数
医療DX推進体制整備加算210点
医療DX推進体制整備加算2(歯科)8点
医療DX推進体制整備加算2(調剤)6点
加算名点数
医療DX推進体制整備加算38点
医療DX推進体制整備加算3(歯科)6点
医療DX推進体制整備加算3(調剤)4点

医療DX推進体制整備加算1と2はそれぞれ、以下の施設基準を満たすことが必要です。

  • マイナンバーカードの健康保険証利用について、十分な実績を有していること。
  • マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること。

また、医療DX推進体制整備加算3に関しては、「マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を有していること。」と要件が決められています。

マイナ保険証利用率

医療DX推進体制整備加算の分類は、マイナ保険証利用率により異なります。暫定案にはなりますが、以下を参考にしてください。

利用率実績令和6年7・8月~令和6年10・11月~
適用時期令和6年10月~令和7年1月~
加算115%30%
加算210%20%
加算35%10%

令和7年4月以降のマイナ保険証利用率に関する実績要件は、附帯意見を踏まえ、本年末までを目処に検討され、改めて設定されます。

マイナ保険証利用率には2種類があります。

一つはレセプト件数ベース利用率。これは、2ヶ月後に実績が把握でき、3ヶ月後から加算に反映されます。計算方法は、「マイナ保険証の利用者数の合計 ÷ レセプト枚数」で、支払基金から毎月各医療機関・薬局にメールで通知されています。

もう一つはオンライン資格確認件数ベース利用率。こちらは、1ヶ月後に実績が把握でき、2ヶ月後から加算に反映されます。計算方法は、「マイナ保険証の利用件数 ÷ オンライン資格確認等システムの利用件数」です。この利用率についても、今後、支払基金からの通知が予定されています。

原則としてはレセプト件数ベース利用率が基準となりますが、来年1月までの間は、オンライン資格確認件数ベース利用率を用いることも可能です。どちらの利用率を採用するかは、医療機関が自由に選択できます。

どちらの計算方法でも、マイナンバーカードの利用促進が重要であることは変わりません。

医療DX推進体制整備加算の詳細は、厚生労働省の資料でまとめられているのでこちらも参考にしてください。

医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて 厚生労働省保険局医療課

医療DX推進体制整備加算の申請手順

医療DX推進体制整備加算の申請は、以下のステップで行います。

  1. 申請書類の準備: 申請に必要な書類を準備します。必要な書類は、医療機関の種類や規模によって異なりますので、厚生労働省のホームページで確認しましょう。申請書類には、医療機関の基本情報、医療DX推進体制整備に関する取り組み内容などを記載します。
  2. 都道府県への申請: 準備した申請書類を、医療機関の所在地を管轄する都道府県に提出します。提出方法は、郵送やオンラインなど、都道府県によって異なります。
  3. 審査: 都道府県は、提出された申請書類に基づいて、医療機関が要件を満たしているか審査を行います。審査では、医療機関の施設や設備、人員体制などが確認されます。
  4. 結果通知: 審査の結果、要件を満たしていると認められた医療機関には、医療DX推進体制整備加算の対象として認定され、加算の算定が開始されます。

医療DX推進体制整備加算の届出について

医療DX推進体制整備加算の届出には、2点重要なポイントがあります。

まず、マイナンバーカードの利用率に関する施設基準は、医療機関が毎月達成しているかどうかを確認するだけで、地方厚生局への届け出は不要です。また、既に医療DX推進体制整備加算を届け出ている医療機関も、改めて届出を提出する必要はありません。

ただし、マイナンバーカードの利用率が規定を満たしていない場合は、加算が適用されない点にご注意ください。届出が受理されても、利用促進が不十分だと加算が無効になる可能性があります。

医療DX推進による具体的なメリット

医療DX推進体制整備加算は、医療機関にとって、患者さんの満足度向上、医療従事者の負担軽減、そして病院経営の安定化など、多くのメリットをもたらします。

それは、まるで、古い病院の建物を最新鋭の設備とシステムを備えた病院へと生まれ変わらせるようなものです。ここでは、医療DX推進体制整備加算によって得られる具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。

患者の待ち時間が減る

医療DX推進体制整備加算を導入することで、患者さんにとって、より質の高い医療サービスを受けられるだけでなく、病院での待ち時間短縮や手続きの簡素化など、様々な面で利便性が向上します。

例えば、以前は患者さんが病院を受診するたびに、保険証の確認やカルテの準備などで、長い時間待たされることがありました。しかし、オンライン資格確認システムを導入することで、患者さんは診察券を忘れてしまっても、スマートフォンやマイナンバーカードで受付ができるようになります。

これは、まるで、いつも持ち歩いているスマートフォンが診察券代わりになるようなものです。受付の手間が減るだけでなく、診察券を忘れてしまった場合でも安心して受診できるという安心感にもつながります。

医療従事者の負担軽減の実績

医療DX推進体制整備加算は、医療従事者の業務効率化にも大きく貢献します。

例えば、電子カルテシステムを導入することで、紙カルテの記入や管理にかかる手間が省け、その時間を患者さんとのコミュニケーションや、より高度な医療行為に充てることができます。医師や看護師は、患者さんと向き合う時間を増やし、より丁寧な診察や説明ができるようになるため、医療の質向上にもつながると考えられます。

また、医療事務の業務効率化も期待できます。オンライン資格確認システムや電子カルテシステムと連携した会計システムを導入することで、医療事務の作業負担を軽減し、ヒューマンエラーの防止にもつながります。これは、医療事務スタッフがより専門性の高い業務に集中できる環境を作ることに繋がり、医療機関全体のサービス向上に貢献します。

さらに、医療従事者間の情報共有もスムーズに行えるようになるため、チーム医療の推進にも役立ちます。例えば、医師と看護師が患者さんの情報を共有することで、よりきめ細やかなケアを提供できるようになります。情報共有がスムーズに行われることで、医療ミス防止にもつながり、患者さんの安全確保にも貢献します。

医療従事者の負担軽減は、そのまま医療の質向上につながります。

経済的効果とコスト対効果の分析

医療DX推進体制整備加算の導入は、医療機関にとって初期費用や運用コストがかかりますが、長期的には経済的効果も期待できます。例えば、業務効率化による人件費の削減や、診療報酬の加算などが挙げられます。

また、医療の質向上による患者さんの増加も見込めます。患者満足度が向上すれば、病院の評判も高まり、新規の患者さんの獲得にもつながります。

さらに、医療DX推進体制整備加算を導入することで、国が推進する医療費適正化にも貢献することができます。

医療DX推進体制整備加算は、医療機関にとって、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な経営安定化にも大きく貢献すると言えるでしょう。

まとめ

医療DX推進体制整備加算は、病院やクリニックがデジタル化を進めるための取り組みを国が支援する制度です。 電子カルテシステムやオンライン資格確認システムなどの導入を促進することで、患者満足度向上、医療従事者の負担軽減、そして病院経営の安定化など、多くのメリットをもたらします。

加算の対象となるには、施設基準と体制基準を満たす必要があり、申請には必要な書類を準備し、都道府県に提出する必要があります。 医療DXは、医療現場の効率化や質の向上に役立ち、患者さんにとってより良い医療を提供し続けるために不可欠な取り組みです。医療機関にも患者にも双方にメリットがもたらされるので、積極的に取り組んでみましょう。

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この記事を書いた人

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