医療DX令和ビジョン2030とは？DX化で変わる医療の未来

「医療DX」という言葉は、耳にしたことがあるでしょうか？

医療現場にデジタル技術を取り入れることで、患者さんの負担を軽減し、より質の高い医療を提供しようという取り組みです。 2030年までに、日本は「医療DX令和ビジョン2030」に基づき、患者一人ひとりに最適な医療を提供する「個別化医療」の実現を目指しています。

病院の待ち時間短縮、過去の医療情報の共有、オンライン診療など、様々な革新的なサービスが登場し、医療の未来は大きく変わろうとしています。 この記事では、医療DX令和ビジョン2030の概要やポイントを解説します。

医療DX令和ビジョン2030の概要と目指す未来

医療DXは、医療現場でデジタル技術を使うことで、患者さんにとって、より良い医療を、もっと身近なものにしようという取り組みです。 この取り組みをまとめた計画が「医療DX令和ビジョン2030」です。

この計画では、2030年までに、どんな未来を目指しているのでしょうか？ 医療DXに注力していきたい医療機関は把握しておく必要があるので、詳しく見ていきましょう。

医療DXとは何か

医療DX令和ビジョン2030を理解するには、「そもそも医療DXとは」を把握しておく必要があります。

• 病院の待ち時間短縮: 病院の受付や診察を、スマートフォンで予約したり、順番を確認できるようになります。 まるで、レストランの予約みたいに、待ち時間を気にせず、スムーズに病院に行くことができます。予約サイトやアプリで、自分の順番が近づくと通知してくれる機能があれば、病院内で待つ時間も減らせますね。
• 過去の治療情報や検査結果を簡単に共有: 病院に行ったときに、過去の治療情報や検査結果を、医師がすぐに確認できるようになります。 これにより、より的確な診断や治療を受けることができます。例えば、引っ越し先で新しい病院にかかるとき、以前の病院での検査結果や治療内容を医師に伝えるのは大変ですよね。医療DXが進むと、これらの情報を安全なシステム上で共有できるようになり、患者さんも医師もスムーズに情報を確認できます。
• オンライン診療: 病院に行かなくても、自宅からスマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受けられるようになります。 特に、病気の症状が軽く、病院に行くのが大変な方にとって、とても便利なサービスです。仕事で忙しい方や、小さな子供がいるお母さんなどにとっても、時間や場所を気にせず受診できるのは大きなメリットです。

医療DXの概要や導入のポイントなどは、こちらの記事で詳しく解説しているので合わせてご確認ください！

令和ビジョン2030が描く医療の未来像

「医療DX令和ビジョン2030」は、日本の医療システムの未来像を描いたビジョンで、デジタルトランスフォーメーション（DX）による医療の効率化と質の向上を目指しています。このビジョンの主な目標は、個々の患者に最適な医療を提供する「個別化医療」の実現です。

主な取り組み内容:

1. 電子カルテの標準化：全国の医療機関で電子カルテの標準化を進め、医療データの共有を促進します。これにより、患者の情報がどの医療機関でも活用でき、より質の高い治療が可能になります。
2. 診療報酬改定DX：診療報酬のデジタル化を進めることで、医療費の適正化と透明性の向上を目指します。
3. 全国医療情報プラットフォームの創設：医療データを一元的に管理・分析するプラットフォームを構築し、データを活用した病気の予防や早期発見に役立てます​(JMedJ).

これらの取り組みにより、2030年には、より効率的で質の高い医療の提供が実現されることが期待されています。政府や医療機関が協力してこのビジョンの実現を進めており、具体的な施策が進行中です。

現在、5回会議が行われており、医療DXの推進に向けて協議が進められています。各回の詳細が気になる方は、厚生労働省の公式サイトをチェックしてください。

「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム：https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261_00003.html

医療現場への影響と変化

医療DXは、医療現場にも大きな変化をもたらします。 例えば、医師や看護師は、これまで多くの時間を費やしていた事務作業から解放され、患者さんの診療やケアに、より集中できるようになります。

また、医療DXによって、地域間の医療格差の解消も期待されています。 オンライン診療や遠隔医療の普及により、都市部だけでなく、地方に住む人でも、質の高い医療を、いつでも、どこでも受けられるようになるでしょう。これは、地方に住む患者さんにとって、専門医の診察を受けやすくなるなど、より質の高い医療を受けられる可能性が広がることを意味します。

医療DX令和ビジョン2030：全国医療情報プラットフォームの導入

「全国医療情報プラットフォーム」は、日本全国の医療データを一元的に管理・共有するための基盤です。

このプラットフォームの導入により、各医療機関が持つ患者情報や診療記録、画像データなどが統合され、医療従事者間での情報共有が容易になります。これにより、診断や治療の精度が向上し、患者に対してより質の高い医療が提供されることが期待されています。

また、ビッグデータを活用することで、病気の予防や新たな治療法の開発など、医療の発展にも寄与します

オンライン資格確認システムの活用

オンライン資格確認システムは、医療現場における業務効率化と患者の医療情報管理を目的としたシステムです。マイナンバーカードを使用することで、患者の医療情報を瞬時に確認でき、受付業務の迅速化や誤入力のリスク軽減につながります。特に、異なる医療機関間での情報共有がスムーズになるため、診断や治療の質の向上が期待されています。

例えば、救急医療や初診の場面で、過去の病歴や服薬情報、アレルギーなどのデータが即座にアクセス可能となり、迅速で適切な治療判断が可能になります。また、医療従事者の負担を軽減し、患者対応により多くの時間を割けることが大きな利点です。

医療情報共有の重要性

医療情報の共有は、診療の精度向上と患者安全の確保において重要な役割を果たします。

過去の治療歴や投薬情報は、診断や治療計画に不可欠であり、複数の医療機関で同一情報を共有することで、重複検査や過剰投薬の防止、診療の効率化が実現します。

クラウド間連携の実現

全国医療情報プラットフォームは、オンライン資格確認システムを基盤に、医療データをクラウド上で一元管理します。これにより、診療所や病院間でのデータのやり取りがシームレスになり、必要な情報が迅速に共有されます。

特に、電子カルテ、電子処方箋、健診結果などの情報がクラウドで連携することで、医療従事者が安全かつ効率的に情報を活用できる環境が整います。

医療DX令和ビジョン2030：電子カルテの標準化とこれからの展開

現在、電子カルテシステムは多くの医療機関で導入されていますが、システム間の互換性が低く、異なる医療機関間での情報共有が難しいという課題があります。これは、異なる言語を話す人々がコミュニケーションを取るのが難しいのと似た状況です。そのため、医療従事者は患者の診療情報を十分に把握するために多くの労力を要します。

国は、この課題を解決するために電子カルテの標準化を推進しています。診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書などの書類や、傷病名、アレルギー情報、検査情報を全国共通のフォーマットでやり取りできる仕組みを整備しています。これにより、患者がどの医療機関にかかっても、過去の治療情報が適切に引き継がれ、診療の質が向上することが期待されています。

さらに、クラウド型の標準化された電子カルテの開発が進められており、小規模な医療機関でも導入しやすくすることが目指されています。これにより、全国どこでも質の高い医療を平等に提供できる社会の実現に向けた一歩となります。この取り組みは、医療従事者が患者の情報を適切に活用し、より良い医療を提供するための重要な基盤となるでしょう。

医療DX令和ビジョン2030：診療報酬改定に向けた取り組み

医療DXを推進するためには、医療機関が積極的にICT化に取り組めるような環境作りも重要です。 これは、新しい道路を整備して、車が走りやすい環境を作るのと同じように、医療機関が最新のデジタル技術を導入しやすいように、制度を整える必要があるということです。

そこで、診療報酬改定において、医療機関がオンライン資格確認システムや電子カルテシステムなどの導入を進める際の費用が補助されるなど、医療DXを後押しする制度が導入されています。

例えば、オンライン資格確認システムを導入すると、患者さんはマイナンバーカードを病院の受付にかざすだけで、保険証の確認や医療費の計算、医療情報の取得が可能です。

このシステムは、患者さんにとって便利なだけでなく、医療機関にとっても事務作業の効率化につながります。 このようなシステムを導入した医療機関に対しては、診療報酬で評価される仕組みが作られています。

医療DXに関する診療報酬については、こちらの記事で詳しく解説しているので気になる方はチェックしてみましょう！

医療従事者の負担軽減への道筋

医療現場では、医師や看護師は日々多くの業務に追われています。 電子カルテの導入やオンライン資格確認システムの導入は、医療従事者の負担を減らし、患者さんにより良い医療を提供するためにも重要な役割を担っています。

例えば、電子カルテシステムの導入によって、紙カルテへの記入やデータ入力などの事務作業を減らすことができます。 これは、医師や看護師が、本来の業務である患者さんの診療やケアに、より集中できるようになることを意味します。

また、医療情報を一元管理することで、情報の検索や共有がスムーズになり、業務効率化につながります。 さらに、AIを活用した画像診断支援システムの導入によって、医師の診断をサポートし、負担軽減と診断精度の向上を両立させることも期待されています。

医療DXによって、医療従事者がより働きやすい環境が整えば、それは患者さんにとって、より質の高い医療を受けられることにつながります。

医療DX令和ビジョン2030は今後の医療界の行動指針になる

「医療DX令和ビジョン2030」は、2030年までにデジタル技術を活用し、患者中心の個別化医療を実現することを目指す計画です。

病院の待ち時間短縮、オンライン診療、過去の治療情報の共有など、患者にとってより便利で質の高い医療提供を目指しています。また、全国医療情報プラットフォームの導入により、医療機関間での情報共有を促進し、患者は安心して医療機関を選べるようになります。

電子カルテの標準化や診療報酬改定によるICT化推進、医療従事者の負担軽減など、医療現場の効率化と質の向上も期待されています。

医療DXは今後のトレンドになるので、業務効率化やIT化を進めたい方は積極的に取り組みましょう！