医療DX ｜メリットとデメリットを開業医の目線で解説

「医療DX」という言葉を耳にする機会が増えてきました。そもそも医療DXとは何かご存じでしょうか。また、具体的なメリットやデメリットは何なのでしょうか。

医療DXとは、「ITによって医療現場の課題を解決すること」です。メリットとして、病院の業務効率化やコスト削減などが期待されています。一方で、導入コストやIT知識のハードルなど、デメリットも存在します。

この記事では、医療DXのメリット・デメリットを、開業医目線で解説していきます。この記事を読むと、ご自身のクリニックにおいて医療DX導入をすべきか否か、整理することができます。

• 医療DXって何？
• メリット、デメリットは？
• 自分のクリニックにも導入した方がいいの？

医療DXとは、ITによって医療現場の課題を解決すること

医療DXとは、「ITによって医療現場の課題を解決すること」です。

厚生労働省は「医療DX令和ビジョン2030」を発表しました。これは、医療DXによって患者さんそれぞれに最適な医療を提供する「個別化医療」の実現を目指すものです。

では、なぜ医療DXが求められているのでしょうか？ それは、手書きの書類作成など、従来の医療現場が非効率な業務を抱えているからです。

医療DXは、これらの課題を解決し、医師や看護師が患者さんとの時間を増やし、より質の高い医療を提供できるようにするための取り組みなのです。

「医療DX令和ビジョン2030」の概要についてはこの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。

医療DXのメリット

医療DXのメリットには以下のようなものがあります。

• 業務の効率化
• コスト削減
• データの紛失・破損を予防

医療DX メリット①：業務の効率化

業務効率化により、下記のことが期待できます。

• 患者満足度が向上してよい口コミが広がる
• 回転率が向上する

医療現場は多くの事務仕事を抱えています。例えば、カルテの管理や会計、レセプト請求など。これらの業務をアナログで行っていると、どうしても時間や手間がかかってしまいます。

結果として、医師や看護師が患者さんに割ける時間が短くなってしまうのです。これらの業務を効率化し、診療時間をより多く確保できる。医療DXのメリットはここにあります。

例えばオンライン予約システムを導入すると電話対応の負担を削減でき、患者さんは予定に合わせて来院できます。また、会計システムと連携させることで会計処理もスムーズになります。

医療DX メリット②：コスト削減

医療DXのメリットとして、コスト削減も重要です。

例えばオンライン診療システム。小さなスペースで診療を行える、スタッフの交通費を削減できる、といったメリットがあります。

さらに、医薬品の発注や在庫管理をシステム化することで、発注ミスや在庫切れのリスクを低減できます。適切な在庫管理により、コスト削減につながります。

医療DX メリット③：データの紛失・破損を予防

医療DXの導入により、データの紛失や破損のリスクを減らせます。近年、電子カルテの導入が進んではいますが、データの管理は単体のサーバーで行われている場合がほとんど。

自然災害など不測の事態によって医療データが失われる危険性があります。医療DXの進展により、医療情報がクラウド上で管理されるようになれば、このリスクを大幅に軽減できます。

災害時でも医療を提供できるようになる、というのも医療DXのメリットの１つです。

医療DXのデメリット

医療DXには、先述したメリットだけでなく、デメリットもあります。

活用するにあたっては、デメリットも把握しておくことが重要なので、詳しく見ていきましょう。

• 導入コスト
• 医療従事者にITリテラシーが必要
• 集患に不利になりうる

医療DX デメリット①：導入コスト

医療DXを導入するには多額の費用がかかります。

例えばオンライン診療システムであれば、導入費用に加えてシステムの運用・保守費用、セキュリティ対策費用などが必要です。費用対効果が見込めなければ、クリニック経営を圧迫し得ます。

導入費用は、数百万円から数千万円規模になることも珍しくありません。導入前に、しっかりと見積もりを取り、予算と照らし合わせる必要があります。

医療DX デメリット②：医療従事者にITリテラシーが必要

医療DX導入のため、医療従事者はシステムや機器を使いこなす必要があります。しかし、医師にはパソコンなどのIT機器に不慣れな方も多い。導入当初は操作に戸惑うことも考えられます。

また、システムのトラブル対応、アップデートやメンテナンス作業なども必要になります。すでに多くの業務を抱える医療現場にとって、これは大きなデメリットです。

医療DXをスムーズに導入するためには、医療従事者に対する十分な研修やサポート体制が不可欠です。わかりやすい操作マニュアルなど、医療従事者の負担を軽減するための工夫も必要です。

医療DX デメリット③：集患に不利になりうる

デジタル機器に不慣れな患者にとっては、オンライン予約などのシステム利用が難しい場合があります。医療DXを進める病院は、最新技術に疎い高齢者からは敬遠される可能性があるのです。

クリニックがターゲットとする患者層を検討し、医療DXが患者離れを起こさないか検討する必要があります。このデメリットに対しては、電話予約や紙の問診票など従来のものを残す、などの対策が考えられます。

まとめ

医療DXのメリットには下記のようなものがあります。

• 業務の効率化
• コスト削減
• データの紛失・破損を予防

デメリットには下記のようなものがあります。

• 導入コスト
• 医療従事者にITリテラシーが必要
• 集患に不利になりうる

メリットとデメリットのバランスを考え、ご自身のクリニックに導入すべきか検討してみてください。

医療DXの詳細は、こちらの記事でも詳しく解説しているので、あわせてチェックしておきましょう！