そんな夢を抱く医師も多いかもしれません。しかし、現実には開業医は、高いリスクと廃業率、収入の不安定さ、激務な勤務環境といった厳しい現状に直面しています。

この記事では、開業医が「やめとけ」と言われる厳しい現実と、それでも開業医として成功するために必要な知識、そして成功する開業医に共通する特徴を詳しく解説していきます。

開業医がやめとけと言われる理由3つ

「開業医って実際どうなの？」「開業医って儲かるの？」と、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。確かに、開業医は自由な働き方ができたり、高収入を得られるイメージがありますよね。しかし、現実は甘くありません。開業医は、大きな責任とリスクを伴う仕事です。この記事では、開業医が「やめとけ」と言われる理由を3つ解説していきます。

高いリスクと廃業率の現状

開業医は、病院の経営者としての顔も持ち合わせていなければなりません。患者さんを診察するだけでなく、経営やお金の管理など、やるべきことがたくさんあります。もし、経営がうまくいかずに赤字が続いてしまったら、最悪の場合、病院を閉鎖しなければなりません。そうなると、開業時に借りたお金が返せなくなってしまうこともあります。

これは、まるで、自分の力でお店を経営するようなものです。美味しい料理を作ったり、素敵な商品を売ったりするだけでは、お店はうまくいきません。お金の管理や、お客さんを呼び込むための工夫も必要です。もし、お客さんが全然来なかったり、お金の使い方が間違っていたら、お店は潰れてしまうかもしれません。

さらに、近年は、病院の数が増えすぎて患者さんが減っている地域もあるため、開業した病院がすべて成功するとは限りません。実際、多くの開業医が、経営難による廃業という厳しい現実と直面しています。

2021年には、なんと567件もの医療機関が休業・廃業・解散しました。そのうち、診療所（クリニック）は471件と過去最多で、これは、新しく開業する病院の数よりも、廃業する病院の数の方が多いことを意味します。

新たに開業する病院が多いということは、それだけ競争が激しくなっているということです。競争に負けてしまうと、患者さんが来なくなり、病院を閉鎖せざるを得なくなってしまいます。

引用元：株式会社帝国データバンク「医療機関の休廃業・解散動向調査（2021 年）」

収入が不安定で儲からないケース

開業医は、勤務医と比べて収入が多いイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実際には、収入が不安定で、勤務医よりも収入が少なくなってしまうケースもあるのです。開業医の収入は、病院の経営状態に左右されます。患者さんが多く来院する病院であれば、収入も多くなりますが、患者さんが少ない病院は、収入も少なくなってしまいます。

これは、個人で仕事をしている人に似ています。仕事がたくさんあれば、収入も多くなりますが、仕事が少なければ、収入も減ってしまいます。開業医も、患者さんが多ければ収入は増えますが、患者さんが少なければ収入は減ってしまうのです。

例えば、同じ地域に新しい病院が開院した場合、患者さんの数が減ってしまう可能性があります。また、病気の流行や不況などの社会的な影響を受けることもあります。このような状況下では、収入が安定せず、生活が苦しくなってしまう開業医もいるのです。

激務になりがちな勤務環境

開業医は、病院の経営から患者さんの診察、治療、手術まで、あらゆる業務をこなさなければなりません。そのため、勤務医と比べて、労働時間が長くなり、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。

例えば、患者さんが少ない日でも、病院の経営に関する事務作業や、医療機器のメンテナンスなど、やらなければならないことがたくさんあります。また、急患に対応するために、夜遅くまで病院に残ったり、休日でも呼び出されることもあります。

このように、開業医は、プライベートな時間を確保することが難しく、常に仕事のことを考えていなければならないというプレッシャーと戦いながら、働いています。これは、まるで、毎日マラソンを走り続けるようなものです。体力も気力も限界を超えてしまい、体調を崩してしまう開業医もいます。

開業医になるための必要なステップ4つ

開業医になるということは、医師としての専門性を活かしながら、自分の力で病院という「お店」を経営することです。患者さんを診察するだけでなく、病院経営者としての顔も持ち合わせなければなりません。

資金調達と開業資金の計画

開業医になるには、まず、開業資金と運転資金をどのように調達するか、綿密な計画を立てることが重要です。開業資金は、クリニックの建設や医療機器の購入、スタッフの雇用など、多岐にわたる費用をカバーする必要があります。

開業資金は、自己資金と融資を組み合わせて調達することが一般的ですが、自己資金の割合が高いほど、融資を受けやすくなる傾向があります。これは、まるで、銀行からお金を借りて新しい家を建てるようなものです。頭金が多ければ多いほど、銀行は「この人はきちんと返済できるだろう」と判断し、安心してローンを貸してくれる、というわけです。

開業医として成功するには、開業資金だけでなく、運転資金も準備しておかなければなりません。運転資金とは、簡単に言うと、病院を経営していくための日々の費用です。例えば、スタッフの給料、医療材料の購入費、電気代、水道代など、さまざまな費用がかかります。

開業時には、自己資金と融資額を合わせて最低でも1,500万円以上必要と言われており、診療科によっては8,000万円以上必要なケースもあります。これは、病院の規模や診療科によって、必要な医療機器や設備が異なるためです。例えば、CTやMRIなどの高額な医療機器を導入する場合は、その分、開業資金も高額になります。

開業後の資金繰りも非常に大切です。資金繰りがうまくいかないと、病院の経営が行き詰まってしまう可能性があります。

開業資金が尽きた段階で利益が十分でなければ、運営が難しくなり廃業に追い込まれてしまうでしょう。資金繰りの安定化のためには、収入と支出を予測し、適切な資金管理を行うことが重要です。具体的には、毎月の収入と支出を記録し、収支のバランスを把握することが大切です。

必要な資格や条件の確認

開業医になるためには、医師免許はもちろんのこと、いくつかの資格や条件を満たす必要があります。

まず、医師免許を取得後、臨床研修を修了し、医師としての実務経験を積む必要があります。一般的には、5年以上の実務経験が求められます。これは、医師として一人前になるためには、ある程度の経験が必要だと考えられているからです。

さらに、厚生労働省の定める施設基準を満たした医療機関を開設する必要があります。施設基準は、診療科や診療内容によって異なります。例えば、内科のクリニックを開設する場合に必要な広さや設備と、外科手術を行うクリニックに必要な広さや設備は異なります。事前に自分がどのような医療機関を開設したいのかをよく検討し、必要な施設基準を満たしているかを確認する必要があります。

その他にも、医療法に基づく手続きや、保健所への届出など、様々な手続きが必要となります。これらの手続きは複雑で時間がかかる場合もあるため、余裕を持って準備を進めることが大切です。

クリニックの立地と物件選び

クリニックの立地は、開業後の成功を大きく左右する重要な要素の一つです。

患者にとって通いやすい場所であることはもちろん、競合となる医療機関の状況や、地域住民のニーズなどを考慮する必要があります。

例えば、小児科を開業する場合には、小学校や幼稚園、公園などの近くにクリニックを構えることが重要となります。また、内科や外科などの診療科では、駅に近い場所やバス停から近い場所など、交通の便が良い場所が適しています。

物件選びも、クリニックの成功を左右する重要な要素です。クリニックの規模や診療内容に合った広さや間取りであることはもちろん、駐車場の有無や、バリアフリーに対応しているかなども重要なポイントです。例えば、車いすの患者さんが来院しやすいように、入り口にスロープを設置したり、エレベーターを設置したりする必要があります。

患者獲得のためのマーケティング戦略

開業医として成功するためには、患者を獲得するためのマーケティング戦略が欠かせません。マーケティングスキルは、医療機関の集客に必要です。インターネットや地域性を有効活用したマーケティングを展開できれば、スムーズな集客に期待できます。

まず、クリニックのターゲットとなる患者層を明確化し、その患者層に合わせたマーケティング戦略を立てる必要があります。例えば、若い世代の患者をターゲットとする場合は、SNSを活用した情報発信や、オンライン予約システムの導入などが有効です。高齢者の患者をターゲットとする場合は、地域密着型の活動や、分かりやすい情報発信などが重要になります。

また、地域の医療機関との連携や、地域住民との交流なども、患者獲得に繋がる重要な要素となります。地域住民向けの無料健康相談会や、健康に関するセミナーなどを開催することで、クリニックの認知度向上を図ることができます。さらに、マーケティングスキルが高ければ、将来的に店舗の拡大ができるかもしれません。開業医として経営していくためには、マーケティングスキルを身につけておきましょう。

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成功する開業医に求められる特徴5つ

開業医が「やめとけ」と言われる理由を理解した上で、それでも開業を目指す医師には、越えなければならない壁がいくつもあります。開業医は、医療の知識や技術だけでなく、経営者としての視点や患者さんとのコミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルが求められます。今回は、成功する開業医に共通する5つの特徴を、実際の診療現場での経験を交えながら詳しく解説していきます。

経営スキルと計画性の重要性

開業医は、医師であると同時に、クリニックという「お店」の経営者でもあります。患者さんに最高の医療を提供するためには、クリニックを安定して経営していくための経営スキルは欠かせません。これは、まるで、自分の力で船を航海させるようなものです。航海の知識や技術はもちろん必要ですが、天候や海流を読み、燃料や食料を管理し、目的地まで安全に航海するには、船長の舵取りが非常に重要になります。

クリニックを開業するということは、まさに、自分自身の手で船の舵を取り、広大な海に乗り出すようなものです。患者さんという大切な乗客を乗せて、医療という航海を成功させるためには、医師としての専門知識や技術だけでなく、経営者としての視点や能力が欠かせません。

具体的には、クリニックを開業するまでに、どれくらいの資金が必要なのか、毎月の収入と支出をどのように管理していくのか、といった資金計画をしっかりと立てておく必要があります。闇雲に航海に出るのではなく、航海の目的やルート、必要な物資などを事前に計画しておくことが重要です。

また、患者さんに選んでいただけるクリニックにするためには、どのような医療サービスを提供するのか、他のクリニックとの差別化をどのように図るのか、といった経営戦略も重要になります。他の船との差別化を図るように、他のクリニックにはない特徴や魅力を打ち出す必要があります。

さらに、クリニックの立地や規模、診療時間、スタッフの採用など、開業前に決めておくべきことがたくさんあります。これらのことを、しっかりと計画し、準備しておくことが、開業後の成功に繋がります。

コミュニケーション能力の必要性

開業医にとって、患者さんとの良好なコミュニケーションは非常に大切です。患者さんの話をじっくりと聞き、わかりやすく説明することで、安心して治療を受けてもらうことができます。

例えば、風邪で来院された患者さんに対して、「風邪ですね」の一言で終わらせるのではなく、「〇〇さん、風邪の症状がつらいですね。熱はいつからありますか？ 咳や鼻水はいかがですか？」と、患者さんの症状や気持ちを気遣う言葉を添えることが大切です。

さらに、「お仕事は休めそうですか？」「ご家族に、小さなお子さんはいらっしゃいますか？」など、患者さんの生活背景を考慮した上で、処方する薬や生活上の注意点などを説明することで、患者さんの不安を軽減し、安心感を与えることができます。

また、スタッフとのコミュニケーションも重要です。クリニックの運営は、医師一人ではできません。看護師や事務スタッフなど、他のスタッフと協力し、チームとして働くためには、日頃からコミュニケーションを密に取り、信頼関係を築いておくことが大切です。

目標達成に向けた向上心

医療技術は日々進歩しています。開業医として、常に最新の医療技術や知識を学び続ける向上心を持つことが大切です。

新しい薬や治療法が開発されたり、病気のメカニズムが解明されたりすることで、より効果的な治療を提供できるようになる可能性があります。最新の医療情報を常に収集し、学び続ける姿勢を持つことで、患者さんに最適な医療を提供することができます。

例えば、糖尿病の治療薬は、近年、新しいタイプのものが次々と開発されています。これらの薬剤は、従来の薬剤よりも血糖値を下げる効果が高く、副作用が少ないという特徴があります。糖尿病の患者さんの症状や病状は一人ひとり異なるため、最新の治療薬に関する知識を深めることで、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供することができます。

責任感を持った医療提供

開業医は、患者さんの健康と生命を預かる、という大きな責任を負っています。そのため、常に責任感を持って、医療行為を行う必要があります。

例えば、患者さんの症状をしっかりと見極め、適切な検査や治療を行うことはもちろんのこと、もしも、自分のクリニックで対応できない場合には、他の医療機関を紹介するなど、患者さんにとって最善の医療を提供できるよう、責任を持って行動しましょう。

これは、医師として当然の責務ですが、同時に、開業医として、自分の判断や行動が、クリニックの経営にも影響を与えることを意識する必要があります。

患者に寄り添う姿勢

開業医として最も大切なことは、患者さんに寄り添い、親身になって診療を行うことです。患者さんの立場に立ち、不安や悩みに共感することで、信頼関係を築くことができます。

例えば、患者さんの話に耳を傾け、気持ちに寄り添うことを心がけましょう。また、患者さんの生活背景や価値観を理解し、治療方針を決定する際には、患者さんの意見を尊重することも大切です。

特に、開業医として、患者さん一人ひとりとじっくりと向き合い、時間をかけて診療することができる点は、大きなメリットです。患者さんの話を丁寧に聞き、不安や疑問に寄り添うことで、患者さんとの信頼関係を築き、安心して治療を受けてもらうことができます。

さらに、病気のことだけでなく、患者さんの生活習慣や悩み事などにも耳を傾けることで、患者さんとの距離を縮め、より深い信頼関係を築くことができます。