近年、医療現場のDX化が進む中、Web問診システムは多くの病院で導入が進んでいます。「日々の診療の業務負担を少しでも改善した」と考えている院長も多いのではないでしょうか?
この記事では、Web問診システムの仕組みから、導入するメリット、選び方のポイントまで、余すことなく解説します。患者さんの待ち時間短縮に繋がるだけでなく、受付スタッフの負担軽減、そして感染症対策にも効果的なWeb問診システム。この記事を読めば、その魅力をきっと理解していただけるはずです。
Web問診システムとは?
Web問診システムとは、病院の受付で渡される紙の問診票を、インターネット上で入力できるシステムのことです。患者さんはスマートフォンやパソコンから、いつでもどこでも問診に答えることができます。
これにより、病院での待ち時間を減らし、スムーズに診療を受けられるようになります。問診票のデジタル化は、医療現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、近年多くの病院で導入が進んでいます。
例えば、私が以前勤務していた総合病院では、Web問診システムの導入前は、初診の患者さんが来院してから診察室に入るまで、平均で1時間以上かかっていました。問診票への記入、受付での手続き、そして待合室での待ち時間などが積み重なって、患者さんにとって大きな負担となっていました。
しかしWeb問診システムを導入した後は、待ち時間が平均30分程度に短縮されました。患者さんからは「待ち時間が短くなって助かる」「自宅で落ち着いて問診に答えられるので、伝え忘れがない」といった喜びの声が多く寄せられています。
Web問診システムが注目されている背景
Web問診システムが注目されている背景には、病院での待ち時間短縮だけでなく、様々な理由があります。
- 受付スタッフの負担軽減
- 患者の利便性向上
- 感染症対策
- 診療の効率化
受付スタッフの負担軽減
これまで受付スタッフが行っていた、紙の問診票の受け渡しや確認、電子カルテへの入力などの作業を大幅に減らすことができます。以前、私が担当していた外来では、受付スタッフが1日に何百枚もの問診票を処理していました。それは大変な作業量で、ミスも起こりやすく、スタッフの大きな負担になっていました。
Web問診システム導入後は、これらの作業が自動化され、スタッフは他の業務に集中できるようになっています。その結果、受付業務全体の効率が上がり、さらに患者さんへの対応も丁寧になりました。
患者の利便性向上
待ち時間の短縮以外にも、自宅でゆっくりと時間をかけて問診に答えることができるため、症状を伝え忘れにくくなります。例えば、持病のある患者さんなどは、服用している薬の名前や服用量、過去の病歴などを正確に伝える必要があります。病院の待合室で慌てて問診票に記入するよりも、自宅で落ち着いて入力する方が、正確な情報を伝えられる可能性が高まるでしょう。
また、24時間いつでも送信できるので、夜間に症状が悪化した場合でも、すぐに問診を送信できます。
感染症対策
待合室での他の患者さんとの接触機会を減らすことができ、感染症対策としても有効です。新型コロナウイルス感染症の流行以降、病院での感染リスクへの懸念が高まっています。
Web問診システムは、待合室の混雑を緩和し、患者さん同士の接触機会を減らすことで、感染症対策に貢献しています。
診療の効率化
医師は事前に患者さんの症状を把握できるため、診察時間を有効に使うことができます。以前は、診察室に入ってから患者さんの症状を詳しく聞き取っていましたが、Web問診システム導入後は、事前に問診内容を確認できるため、診察時間をより効率的に使えるようになりました。
より的確な診断や治療につなげられるだけでなく、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧な診察も可能です。
クリニックのDX化には他に何がある?
クリニックのDX化(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、クリニックの業務効率化や患者さんの利便性向上を図ることです。Web問診システム以外にも、様々な取り組みがあります。
- オンライン診療: スマートフォンやパソコンを使って、医師の診察を受けることができます。私は、オンライン診療を導入しているクリニックで診察を担当した経験がありますが、通院が難しい高齢者や、育児中の母親などにとって、非常に便利なシステムだと感じました。
- 電子カルテ: 紙のカルテではなく、パソコンで患者さんの情報を管理するシステムです。診察履歴や検査結果などを一元管理することで、情報の共有がスムーズになり、医療ミス防止にも繋がります。私が研修医だった頃、紙カルテの病院で勤務していました。カルテの保管場所を探すのに時間がかかったり、必要な情報が見つからないといった経験がありましたが、電子カルテは検索機能が充実しており、必要な情報をすぐに確認できるので、非常に便利です。
- 予約システム: 電話だけでなく、インターネットからも予約ができるシステムです。24時間いつでも予約できるので、患者さんの利便性向上に繋がります。
- 決済システム: 現金だけでなく、クレジットカードや電子マネーでも支払いができるシステムです。会計処理の効率化や、患者さんの待ち時間短縮に繋がります。
これらのDX化は、患者さんにとってより良い医療サービスの提供に繋がると期待されています。医療DXに関しては、こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
Web問診システムの3つのメリット
Web問診システムのメリットには、以下があげられます。
- 待ち時間の大幅な削減
- 診療の効率化とスムーズな流れ
- 感染症対策としての効果
待ち時間の大幅な削減
Web問診システム最大のメリットは、待ち時間の大幅な削減です。従来の紙の問診票の場合、病院に着いてから記入する必要がありました。しかし、Web問診システムなら、スマートフォンやパソコンを使って、自宅や移動中に事前に問診に答えることができます。
また、受付スタッフが問診票の内容を電子カルテに入力する手間も省けるため、受付業務の効率化にも繋がり、更なる待ち時間の短縮に貢献します。
診療の効率化とスムーズな流れ
Web問診システムは、診療の効率化にも大きく貢献します。医師は患者さんが来院する前に、Web問診の内容を確認することができます。これにより、診察前に患者さんの症状や既往歴などを把握できるため、診察時間をより効率的に使うことができるのです。
Web問診システムによって、医師は限られた診察時間を有効に活用し、より多くの患者さんに質の高い医療を提供することが可能になります。
感染症対策としての効果
近年、感染症対策の重要性がますます高まっています。Web問診システムは、待合室での滞在時間を短縮することで、他の患者さんとの接触機会を減らし、院内感染のリスクを低減する効果があります。
インフルエンザが流行する時期などは、待合室で感染してしまうリスクも高まります。特に小さなお子さんや、持病のある方などは、感染症にかかりやすい状態にあるため、待合室での感染リスクは大きな問題です。Web問診システムを利用することで、待合室での滞在時間を最小限に抑え、感染リスクを軽減することができます。
これは、患者さんだけでなく、医療スタッフにとっても安心できる大きなメリットです。
Web問診システムの種類と選び方
Web問診システムを導入しようと検討しているクリニックの院長先生、数あるシステムの中から最適なものを選ぶのは悩ましいですよね。
この章では、Web問診システムの種類と選び方のポイントを、現場の医師の視点も交えながら分かりやすく解説します。
システムの種類:クラウド型、オンプレミス型
Web問診システムには、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。それぞれメリット・デメリットがあり、クリニックの規模やニーズによって最適な選択肢が変わってきます。
種類 | 初期費用 | カスタマイズ性 | セキュリティ管理 | メンテナンス | アクセス環境 |
---|---|---|---|---|---|
クラウド型 | 低い | 低い | 提供会社 | 提供会社 | インターネット接続 |
オンプレミス型 | 高い | 高い | 自社 | 自社 | 社内ネットワーク |
クラウド型
クラウド型は、インターネットを通じてサービスを提供するタイプです。初期費用が安く、導入もスムーズなのが魅力です。
インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもアクセスできます。システムの更新やメンテナンスも提供会社が担当してくれるので、手間がかかりません。
オンプレミス型
一方、オンプレミス型は、クリニック内にサーバーを設置してシステムを運用するタイプです。初期費用は高額になりますが、システムを自由にカスタマイズできる点が大きなメリットです。
セキュリティ面も自院で管理できるため、安心感があります。
機能:予約管理、問診票作成、電子カルテ連携
Web問診システムを選ぶ際には、搭載されている機能も重要なポイントです。特に、「予約管理」「問診票作成」「電子カルテ連携」の3つの機能は、クリニックの業務効率化に大きく貢献します。
- 予約管理機能:患者さんにとっての利便性向上に繋がります。24時間いつでも予約を取ることができ、予約状況もリアルタイムで確認できます。
- 問診票作成機能:診療科や症状に合わせて問診票をカスタマイズできる機能です。
- 電子カルテ連携機能:Web問診で得られた情報を電子カルテに自動転記する機能です。
セキュリティ対策:個人情報保護の観点
Web問診システムは患者さんの個人情報を扱うため、セキュリティ対策は非常に重要です。万が一、情報漏洩などが発生した場合、クリニックの信頼は大きく損なわれてしまいます。
システムを選ぶ際には、個人情報保護の観点から、データの暗号化、アクセス制限、不正アクセス対策などが適切に実装されているかを確認しましょう。
費用:初期費用、月額費用、保守費用
Web問診システムを導入する際には、費用についても事前に確認しておきましょう。初期費用、月額費用、保守費用など、システムによって費用体系は様々です。クラウド型は初期費用が比較的安価ですが、月額費用が発生します。
一方、オンプレミス型は初期費用が高額になりますが、ランニングコストは抑えられる傾向があります。クリニックの予算に合わせて最適なシステムを選びましょう。
使いやすさ:操作性、インターフェース
Web問診システムは、患者さんにとって使いやすいシステムであることが重要です。高齢の患者さんでも操作しやすいよう、文字を大きく表示したり、シンプルなデザインを採用するなどの工夫が必要です。多言語対応のシステムであれば、外国人の方でも安心して利用できます。
また、医療スタッフにとっても操作しやすいシステムであることが重要です。導入前にデモ版などを利用して、実際に操作してみることをおすすめします。
Web問診システム導入の具体的な手順
Web問診システムは、患者さんにとって待ち時間短縮や利便性向上といったメリットがあるだけでなく、医療機関側にとっても、業務効率化や感染症対策といった多くのメリットがあります。実際に導入するにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。私が様々な医療機関でWeb問診システム導入を支援してきた経験をもとに、具体的な手順を分かりやすく解説します。
- 事前準備:必要な機器、インターネット環境
- システム導入:業者選定、契約、設定
- 運用開始:スタッフへの研修、患者への案内
- 導入後の効果測定:患者満足度調査、業務効率の評価
- トラブルシューティング:よくある問題と解決策
事前準備:必要な機器、インターネット環境
Web問診システム導入の第一歩は、必要な機器とインターネット環境の確認です。まず、患者さんが問診票を入力するために、スマートフォン、タブレット、パソコンなど、インターネットに接続できる環境が必要です。
最近はほとんどの方がスマートフォンをお持ちなので、大きな問題はないかと思いますが、高齢の患者さんの中には、スマートフォンを持っていない方もいらっしゃるかもしれません。そのような方のために、院内にタブレット端末を用意するなどの配慮も必要です。
クリニック側では、スタッフが問診内容を確認し、システムを管理するために、パソコンやタブレットが必要です。インターネット回線は、快適にシステムを利用するために、光回線などの高速で安定した回線を選ぶことをおすすめします。
また、オンプレミス型の場合は、サーバーなどの機器も必要になります。サーバーの設置場所や、セキュリティ対策についても事前に検討しておく必要があります。
システム導入:業者選定、契約、設定
必要な機器とインターネット環境が整ったら、いよいよシステム導入です。まずは、どの業者に依頼するかを決定します。複数の業者から見積もりを取り、それぞれの機能や費用、サポート体制などを比較検討することが重要です。価格だけで判断するのではなく、クリニックのニーズに合ったシステムを選ぶことが大切です。
例えば、小児科であれば、お子さんの年齢に合わせた問診票を作成できる機能が重要になりますし、アレルギー科であれば、アレルギーに関する詳細な問診項目を設定できる機能が重要になります。
契約内容も慎重に確認しましょう。特に、月額費用や保守費用、解約時の条件などは、しっかりと確認しておく必要があります。
システムの設定は、業者に依頼することも、クリニック側で担当者を配置することもできます。どちらの場合も、導入前にしっかりと研修を受け、システムの操作方法を理解しておくことが重要です。
運用開始:スタッフへの研修、患者への案内
システム導入が完了したら、運用開始に向けて準備を進めます。Web問診システムをスムーズに運用するためには、スタッフへの研修が不可欠です。システムの操作方法だけでなく、患者さんへの案内方法や、トラブル発生時の対応についても、しっかりと研修しておきましょう。
患者さんへの案内も非常に重要です。Web問診システムの利用方法を分かりやすく説明することで、患者さんの不安を解消し、利用率の向上に繋がります。クリニックのホームページに操作方法の説明動画を掲載したり、待合室にパンフレットやポスターを設置したりするなど、様々な方法で患者さんに周知しましょう。特に高齢の患者さんには、丁寧に説明することが大切です。
導入後の効果測定:患者満足度調査、業務効率の評価
Web問診システムを導入したら、その効果を測定し、改善に繋げることも重要です。患者満足度調査を実施することで、システムの改善点や、患者さんのニーズを把握することができます。アンケートを実施する以外にも、患者さんからの意見を直接聞く機会を設けることも有効です。
業務効率の評価も重要です。導入前と導入後で、受付業務にかかる時間や待ち時間がどのように変化したかを比較することで、Web問診システムの効果を客観的に評価できます。例えば、待ち時間がどれくらい短縮されたか、受付スタッフの残業時間がどれくらい削減されたかなどを数値化することで、導入効果を明確に示すことができます。
トラブルシューティング:よくある問題と解決策
Web問診システムを運用していると、予期せぬトラブルが発生することもあります。システムエラーやデータ入力ミス、患者さんからの問い合わせなど、様々なトラブルが想定されます。よくある問題とその解決策を事前にまとめておくことで、迅速な対応が可能になります。
例えば、システムエラーが発生した場合は、すぐに業者に連絡し、対応を依頼しましょう。データ入力ミスが発生した場合は、入力方法を再確認し、必要に応じてスタッフ間で情報を共有することで、再発防止に努めてください。患者さんからの問い合わせには、FAQを用意したり、電話対応窓口を設けたりすることで、スムーズに対応することができます。
また、トラブル発生時の対応マニュアルを作成しておくと、スタッフが誰でも適切な対応を取ることができるため、安心です。
まとめ
Web問診システムは、患者さんの待ち時間短縮や利便性向上、医療機関の業務効率化や感染症対策に役立つ便利なシステムです。クラウド型とオンプレミス型があり、クリニックの規模やニーズに合わせて選ぶことができます。予約管理、問診票作成、電子カルテ連携などの機能があり、導入前にこれらの機能が充実しているか確認しましょう。
また、セキュリティ対策や費用についても事前に確認しておくことが大切です。
導入後も効果測定やトラブルシューティングを行いながら、システムを最適化していくことで、患者さんにとっても医療機関にとっても、より良い医療サービスの提供に繋がるでしょう。
Web問診システムは医療DXの一つです。医療DXには他にもさまざまなタイプがあるので、気になる方は、以下の記事も参考にしてみてください。