ステマ規制に違反すると、措置命令の対象になります。命令は事業者名とともに公表されるため、行政上の措置そのものより、公表による影響のほうが大きくなることがあります。
対象になるのは広告主です。投稿したインフルエンサーやアフィリエイターではありません。この記事では、違反時に何が起きるか、どのパターンが問題になるか、発覚した場合にどう対応するかを整理します。
規制の全体像と表記ルールはステマ規制とは?で解説しています。本記事は違反時の措置と対応に絞ります。
ステマ規制違反で何が起きるか
段階があります。すべてが直ちに命令に至るわけではありません。
措置命令の内容
措置命令が出されると、事業者は次の対応を求められます。
- 違反行為の差止め(該当する表示の削除・修正)
- 再発防止策の策定と実施
- 一般消費者への周知徹底
- 命令内容の役員・従業員への周知
一般消費者への周知は、自社サイトや新聞などで違反の事実を告知することを指します。この対応が、事業への影響として最も重くなります。
公表による影響
措置命令は事業者名とともに消費者庁が公表します。公表されると、次の連鎖が起こりえます。
- 報道やSNSで拡散され、ブランド全体の評価に及ぶ
- 広告媒体の審査が厳しくなり、出稿が止まる
- ECモールやプラットフォームから商品ページが削除される
- 取引先から取引条件の見直しを求められる
- 過去の施策すべてに疑いの目が向く
広告が止まった期間の売上機会は戻りません。 事前の体制整備にかかるコストと比較して判断してください。
違反と判断される典型パターン
消費者庁は運用基準で判断の考え方を示しています。実務で問題になりやすいのは、次の類型です。
関与があるのに表記しない
- インフルエンサーに商品を無償提供し、投稿内容を指定したが「PR」表記をさせなかった
- アフィリエイターに成果報酬を支払っているが、記事に広告表記がない
- 自社の従業員が身分を明かさずSNSで自社商品を推奨した
- 第三者を装ったレビューサイトを自社または委託先が運営した
- レビュー投稿の見返りに特典を提供し、高評価を依頼した
金銭の授受がなくても対象になります。商品を無償で送り、投稿を期待した時点で関与があったと判断されうるためです。
表記はあるが判別できない
表記を付けていても、消費者が気づけなければ不十分と判断される可能性があります。
| 状態 | 問題点 |
|---|---|
| 大量のハッシュタグの末尾に #PR | 埋もれて判別が困難 |
| 「もっと見る」を押さないと表示されない | 最初に認識できない |
| 背景と同化した色、極端に小さい文字 | 視認性が低い |
| Ad、Sponsored などの外国語のみ | 一般消費者が理解できるとは限らない |
| 動画の最後だけに表示 | 冒頭で判別できない |
表記の有無ではなく、消費者が気づけるかどうかが判断の基準です。
過去の投稿を放置している
2023年10月1日の施行前に投稿されたコンテンツでも、施行日以降に掲載が続いていれば規制の対象になります。過去のインフルエンサー施策やレビュー記事を棚卸ししていない企業は、ここにリスクが残っています。
責任を負うのは誰か
原則として、措置命令の対象は広告主である事業者です。
| 立場 | 規制対象か |
|---|---|
| 広告主(商品・サービスの提供事業者) | 対象 |
| インフルエンサー・投稿者 | 原則として対象外 |
| 広告代理店 | 広告主の表示として扱われる |
| アフィリエイター | 原則として対象外(広告主が責任を負う) |
この構造は実務上、重い意味を持ちます。外部に委託しても、責任は委託した側に残ります。
「代理店に任せていた」「インフルエンサーが勝手にやった」という説明は、責任の回避になりません。依頼した内容と管理体制が問われます。
課徴金制度との関係
景品表示法には課徴金制度があります。ただし対象となる違反類型は定められており、すべての違反が課徴金の対象になるわけではありません。
具体的な要件と算定方法は、消費者庁の公表資料で確認してください。 自社のケースが該当するかは、違反の内容と期間によって判断が分かれます。
優良誤認・有利誤認については景表法の優良誤認とは?で解説しています。
違反を防ぐ社内体制
判断を担当者に委ねると漏れが出ます。手順として固定してください。
- 依頼書にPR表記の文言と配置位置を明記する(口頭指示にしない)
- 投稿前に原稿を確認し、表記と表現の両方をチェックする
- 投稿後にスクリーンショットを取得し、表記された状態を記録する
- 過去の投稿を棚卸しし、施行日前のものも表記の要否を判断する
- アフィリエイト経由の掲載内容を定期的に確認する
4番と5番が抜けやすい部分です。特にアフィリエイトは、広告主が個々の掲載を把握していないケースが多く、リスクが残ります。
化粧品・健康食品を扱う場合は、薬機法の表現チェックも同時に必要です。判断語の一覧は薬機法のNGワード一覧にまとめています。
発覚した場合の対応
指摘を受けた、または社内で違反に気づいた場合の手順です。
- 該当する投稿・記事を特定し、範囲を確定する
- 表記の追加または投稿の削除を、投稿者に依頼する
- 同じ構造の施策が他にないか、横展開して確認する
- 依頼書のテンプレートと承認フローを改訂する
- 対応の記録を残す(是正の事実を説明できる状態にする)
隠すのではなく、速やかに是正して記録を残すことが結果的にリスクを下げます。行政指導の段階で適切に対応すれば、措置命令に至らないケースもあります。
アフィリエイト施策特有の管理体制はアフィリエイト広告と薬機法にまとめています。
医師監修はステマにあたらない
専門家に監修を依頼し、その事実を明示する行為は規制の対象外です。ステマ規制が問題にするのは関係性を隠すことであり、監修は関係性を開示する手法だからです。
- 監修者の氏名・所属・専門領域を明示するため、関係性が明らかになる
- 事業者の表示であることを隠していない
- 表現の妥当性を事前に確認できるため、薬機法違反の予防にもなる
注意点として、監修者の関与範囲を正確に記載する必要があります。記事全体を確認していないのに「監修」と表示すれば、それ自体が不当表示になりえます。
よくある質問
措置命令を受けると必ず公表されますか
措置命令は消費者庁が公表します。事業者名を含めて公開されるため、報道やSNSで拡散する可能性があります。
インフルエンサー本人も処分されますか
原則として、措置命令の対象は広告主です。ただし依頼した企業の責任として問われるため、外部委託でリスクを移転することはできません。
施行前の投稿も対象になりますか
2023年10月1日以降も掲載が続いていれば対象です。過去の投稿の棚卸しを推奨します。
PR表記を後から追加すれば問題ありませんか
是正としては有効です。ただし表記のない状態で掲載されていた期間について、指摘を受ける可能性は残ります。速やかな是正と記録の保存を推奨します。
社員が個人アカウントで紹介する場合はどうすればよいですか
所属を明記するか、公式アカウントで発信してください。身分を隠したまま推奨すると対象になりえます。
まとめ
- 措置命令では、差止め・再発防止・消費者への周知が求められる
- 命令は事業者名とともに公表される。公表による影響が事業上は最も重い
- 金銭の授受がなくても、無償提供や投稿依頼があれば対象になる
- 責任を負うのは広告主。外部委託しても移転しない
- 2023年10月1日より前の投稿も、掲載が続いていれば対象
- 医師監修は規制に反しない。関係性を開示する手法である
まず過去のインフルエンサー施策とアフィリエイト経由の掲載を棚卸ししてください。表記の追加が必要な投稿を洗い出すことが、最も優先度の高い対応になります。


